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「組織変革こそ、楽しみながらやる」北海道ブランディングサミット2019イベントレポート。

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こんにちは、DONGURIでファシリテーターをしている早川です。
かなり前の話しになってしまうのですが、6月12日に開催された「北海道ブランディングサミット2019」というイベントに参加してきたので、改めてレポートにまとめてみました。
昨年に引き続き登壇したミナベ(@tomomiminabe)のサポートという形で同行したのですが、メイン業務(?)であるタイムキーパーの仕事を忘れてしまうくらい、登壇者の方々の話が興味深く、聞き入ってしまったので、このブログでは私が興味を持ったポイントを中心にイベント内容を交えながらお伝えしていきます。

北海道ブランディングサミットとは?

日本全国から、ブランドコンサルタントや経営コンサルタント、経営者やブランドマネージャーといった、日頃からブランディングを実践している方々が一堂に介し、年に一度北海道で開催されているカンファレンスイベント。
毎年100人以上が参加する注目のイベントで、登壇者もPMC株式会社の中野会長を筆頭に、日本を代表するコンサルタントや経営者ばかり!第一線で活躍する方々だからこそのトークを、半日に渡りたっぷりと聞くことのできる贅沢なイベントです。

昨年のミナベの登壇&参加レポート
経営とブランド「北海道ブランディングサミット」の登壇&参加レポート。

今年のテーマは「 変わっていくもの。変わらないもの。」

大きな環境変化の中、経営課題を解決するために自社のブランド構築を実践してきた企業のノウハウを共有し、組織の事業ドメインや理念体系、マーケティング、人材マネジメントなど、「変わっていくもの。変わらないもの。」について考えます。

上記のテーマに沿って、主に「組織」という切り口で、7名の登壇者がトークセッションやワークショップといった様々な形式でカンファレンスをを展開しました。
私自身も、商品やサービスといった事業の開発に関わるサポートから、採用や育成といった組織系課題の改善など様々な案件に携わらせていただいているなか、近年の傾向としては「組織開発」のご相談を受けることが多く、組織の根本である「あり方」から見直したいというニーズが高まっているように感じます。今回はブランディングサミットということで、「組織」と「ブランディング」の“関係性”に注目しながら登壇者のお話を聞いていきました。

第一部:トークセッション「組織変革」

第一部は、開催記念トークセッションとして、ワークショップという手法を用いて解決へと導くファシリテーション集団ミミクリデザインの安斎代表と、弊社ミナベが登壇。大企業が抱えるビジネス課題から地域が抱えるコミュニティ課題まであらゆる課題に対して、「組織変革」におけるブランディングの重要性について語られました。

組織におけるブランディングの定量的な役割とは?

「期待できる定量的な役割は【採用の質/量】と【ロイヤリティ(育成)】の2つの観点がある。【採用の質/量】については、採用のトレンドが企業が選ぶ側から選ばれる側に変わりつつある現在、選ばれる組織になるためにブランディングが必要。また採用過程における面接は “選抜する”ではなく“マッチング”の場であることを認識することが大切。ロイヤリティ(育成)】については、組織のブランディングにおける重要なポイントとして、社員一人ひとりが意思決定していける組織になること、そしてその意思決定のルールこそがアイデンティティ。組織のブランド形成の出発点には必要不可欠。」(ミナベ)

ブランドアイデンティティとは?

「ブランドアイデンティティは、組織における「内核」と「外装」、そして顧客や社会に与える「印象」の3つで成り立っているもので、アイデンティティが機能するためには、組織の「内核」から滲み出たものと、「外装」、そしてそこから形成される「印象」に一貫性がある必要」(安斎代表)

人をブランドで採用するには?

「採用ファネルのなかで認知拡大や母集団形成、意向上げ、そして面談のクロージングという各観点からブランドのあり方を考え実践していく必要がある。」 (ミナベ)

ブランドを生かした教育はどうすれば?

「具体的な業務にまでブランドアイデンティティを落とし込んでオペレーションを組み、教育を行うことが大切。」(ミナベ)

ブランドを育て続けるには?

「ブランドを育てることを目的化してはいけないと考えていて、スローガンが社内で浸透していたとしても、それがメンバーの行動に紐づいていなくては意味を成さない。ナレッジシェアといった観点から、ブランドのあり方とミッションの実現の方法を結びつける必要がある。」(安斎代表)
「ブランドやアイデンティティを育てるためには、オペレーションのなかでどのように行動評価をするかといった観点と結びつける必要がある。アイデンティティと業務アクションとの結びつきが大切で、いかにちゃんと行動を『褒めてあげるか』を大切にしている。」(ミナベ)

これから求められる組織の型は?

「完全なボトムアップも、完全なトップダウンもなかなか機能しない。資生堂さんの組織開発をお手伝いした際のように、トップダウンで考えた理念を壊して再構築するボトムアップが、絶妙なバランスだと考えている。そうしたバランスを中長期的なサイクルでしっかり維持していくことが大切。」(安斎代表)
「組織のブランドを構築せねばとトップが躍起になっていると、組織全体もプレッシャーを感じてしまう。いかに前向きな活動にしていくか。創ることの共通体験が大切であり、そうした活動のなかで楽しさをもたらすような遊び心も重要。」(ミナベ)

また、“実際にどのように組織を作っていくのか”という点については、ミミクリデザインの安斎さんから「組織のトップが定めた8つの行動理念を各チームの実態に合わせて“ひとつだけ差し替える”としたら?」という問いのワークショップを用いて組織開発を行った以下の例をもとに説明いただきました。

【対談シリーズvol.2】資生堂の社員46000人にビジョンに向けた行動指針を浸透させる -不可能を可能にしたワークショップデザインとは?-

ブランドアイデンティティが社員一人ひとりの意思決定の基準となり、その意思決定によって促される小さな行動の一つひとつつが、顧客や社会に与える印象となって組織としてのブランドを形成させる。「組織」と「ブランディング」が密接に関係していることを、再認識させられるトークセッションでした。

第二部:経営実践者トーク「変わっていくもの。変わらないもの。」

第二部は、経営者の立場から「ブランディング」を経営に活かし組織を強くした、フジコーポレーション株式会社 伊藤 雅弘 代表、株式会社仁 田中 仁代表、田中 めぐみ専務の3名による実践者トーク。

伊藤代表からは「尖らせるブランディング」というテーマで、3年以上ブランディングを行ってきたからこそ話せる具体的な内容と実際変化したことについて語られました。

「不動産の買い取り再販売事業を行う立場から、本来向きあうお客様はユーザーであるべきところを、いつしか仕入れ先である仲介業者の方を向いてしまっていることに気づきました。そこから『私たちの本当のお客様とは誰か?私たちが提供すべき本当の商品は何か?』を考え抜き、そのうえで、他社と差別化が図れる部分にフォーカスし、とにかく尖らせることを意識してブランドアイデンティティとなるVISIONを構築いたしました。
その結果、社員一人ひとりが何をすればいいか明確になり、積極的に考え、提案し、行動するといった活性化に繋がりました。」(伊藤代表)

次に、訪問介護の事業を営むのお二人から、尖らせるブランディングとは逆に「まぁるいブランディング」というテーマでのトーク。

「自ら現場に入り指示を出さないと気が済まない性格から、典型的なトップダウン経営を行ってきました。ただ、それでは経営理念が浸透せず、スタッフも離れていくなど限界を感じ、組織に対してブランディングという考え方を取り入れました。
今まで持っていた『会社は自分のもの』という考え方を改め、『会社は誰のためのものか?そしてその“誰”に対してどう思ってもらいたいのか?』をスタッフと一緒に話し合いながら明文化していきました。スタッフ一人ひとりが自分の想いを共有しながらブランドアイデンティティである理念をつくりあげたことで、スタッフ全員が理念に基づいた行動を自主的に行えるような組織へ変化しました。」(田中代表)

事業や組織といった課題内容は違えど、「ブランディング」を実践することで、社員の “意識”と“行動”が変化したことが二社の共通項であり、その変化が課題に対する解決の糸口になった点は、第一部のトークセッションと合致しており、改めて重要なポイントでと感じました。

第三部:ワークショップ 「経営を変える」

第三部は、大企業のIPO支援を数多く手がけるPMC株式会社の中野会長から、ブランディングの前提として据えるべき経営戦略について、参加者全員に配られた穴埋め式のワークシートを使って一つひとつ整理していく形での講演。

「精神的な強さは経営者に求められる根本要素である。経営とは様々な環境変化に適応し、淘汰されることのないよう常に変化をし続ける環境適応業であることから、経営者自身はブレることのない確固たる精神を確立していなければならない。問題とは全ての始まりであり、「あるべき姿」と「現状」とのギャップである。多くの人は「あるべき姿」が見えていないので、問題を正確に捉えられていないケースが多分にある。そして課題とは、複数ある問題に優先順位を付け、その中でも優先して乗り越えるべき問題のことを指す。問題の優先順位付けは、収益もしくは経営理念への影響度という観点で、重要度と緊急度が高いもの順に順位を決めていく。そして課題として選択したもの以外はやっても意味がないものと割り切り、課題に集中する。」(中野会長)

次に、+d&c合同会社の上田代表から、中野会長のお話に紐づいた「ブランディング」における考え方について、事例を用いながら講演。

「私からは、あるサポート校のブランディングをお手伝いさせていただいた際のお話をさせていただきます。まず初めに行ったことは経営者の方に意思を示していただくこと、『外部パートナーに任せる』のではなく、あくまでトップが旗を振りブランディングプロジェクトを推進していくということを宣言していただきました。そして、内部を巻き込むべく各部署からプロジェクトメンバーを集め、一丸となってブランディングを推進する体制を構築しました。
その後、『社会にどう思われたいか』(ありたい姿)を明確にした上で、現状とのギャップを洗い出し、優先順位付けをお手伝いいたしました。
結果、内部的には『取り組むべき課題』と『やめるべきこと』がはっきりしたことで、何かを決めるときにも一貫した判断基準に則って決断できるようになり、外部からも『この学校はこういう学校である』と明確な認知が確立され、ブランドの姿勢に共感する学生さんやその親御さんから選んでいただけるようになりました。
加えて、私が重要であると考えるのは『ブランドを確立したら言いっぱなしにしないこと』。何かを決めただけでは機能はせず、決めたことを伝えていく、活用していくことで初めて機能するものであると考えています。
このブロジェクトでは書籍化をしたり、ブランドをコンセプトにしたノートを開発し学生さんに活用していただいたり、またその内容を一部Webサイトなどで公開し、各方面に伝えていく活動も合わせて行いました。」(上田代表)

そして最後に、PMC中野会長、+d&c上田代表、ミミクリ安斎代表に加えて、本サミット主催者であるウィン株式会社代表の勝山さんとDONGURIミナベの5名での質疑応答。

ワークショップに対して上層部が乗り気でない場合の対処法は?

論理型と感情型の2つの対処方法があると考えている。論理型は、いかに重要かつ効果的なものであるかを数値や事例を用いて証明する。感情型は、無理に巻き込まずに草の根活動的に実施してしまう。そして資料や映像を記録として残して見せ、じわじわと巻き込み自然参加させる。(ミミクリ安斎代表)

上司が自分の意見を、上に提案してくれない場合の対処法は?

シンプルだがちゃんとコミュニケーションをとり「なぜ上に提案しないのか」原因を明確にすることから行うべき。提案できるレベルに満たない内容なのか、それとも内容はいいが上司のなかでの優先順位が低いのかなど、問題を正確に把握し、それに対して適切な解決法を考え行動すべき。(PMC中野会長)

ブランドに基づいて構築したオペレーションやルールも、追加や修正により変化し続ける必要あると思うが、どのように浸透させているか?

変化や変革にはコツがあると考えていて、それは「小さな変化を繰り返すことで、いかに大きな変革を生むか」ということ。つまり大きな変革のために、小さな変化は絶えず行うべきだと考えていて、またそのことを前提にメンバーとも定期的に機会を設け、対話を繰り返す。小さなことでも常に情報が共有されることで心理安全性も高まり、浸透しやすくなる。(DONGURIミナベ)

参加者が真剣にメモをとりながら登壇者の話を聞いているのに対し、登壇者は終始和やか……というか笑顔の絶えない対比が印象的で、「組織や経営の変革は一人で苦しみながらやるものではなく、周りを巻き込み楽しみながらやるべき、それは組織や経営を良くするためのものだから」という言葉を体現しているかのようでした。

そして今年も……

本ブランディングサミット恒例、北海道の美味しい料理とお酒をいただきながらの懇親会!先ほどまで真剣な表情でメモを走らせていた参加者の皆さんも、登壇者と一緒に和気あいあいと談笑する、終始盛り上がりっぱなしの会となりました。
懇親会のなかでスピーチを求められたミナベは、今回お誘いして一緒に登壇をしたミミクリ安斎さんと共に来年も登壇すること、そしてまた新たな登壇者をお連れすることを(勝手に?)宣言。

この記事を見ていただいたあなたにも声がかかるかもしれませんので、来年はぜひご一緒に!

WRITTER
早川将司(DONGURI)
PHOTOGRAPHER
早川将司(DONGURI)
  • ミナベトモミ

    早稲田大学第一文学部(現文化構想学部)卒。スタートアップベンチャーを中心に50社以上の組織構造設計や、事業立ち上げのコンサルティング、デザイン組織変革に従事。「両利き状態実現による、組織イノベーション」の実践に強みを持つ。

  • 早川将司

    商品・事業開発 / 組織開発において、デザインプロセスを用いたコンサルティングで課題解決を行う。特にワークショップにおけるコンテンツデザインを得意とし、Co-Designの手法を取り入れる。

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