INTERVIEW

創造的衝動への”蓋”が、イノベーションを阻む。ミミクリデザインとの協業で実現する、CCM理論とは。

INTERVIEW

2020年3月。
株式会社DONGURIは株式会社ミミクリデザインと、資本業務提携による横断経営をスタートしました。

多様な専門家によるコンサルテーションを提供するDONGURIと、学術的理論に裏付けされたワークショップを提供するミミクリデザイン。

これまで、組織や事業の様々な課題を解決してきた2社が協業で目指すのは、“イノベーションが起こり続ける”組織を作り上げること。

今回は、ミミクリデザインの代表取締役 安斎勇樹と、DONGURIの代表取締役 ミナベトモミに、新たに開発されたイノベーション理論と、その理論に基づき実践される、社内での協業体制についてインタビュー。

お話を聞くうちに、2社に共通する“遊び”への思いと、心踊る予感に満ちた、イノベーションの芽が見えてきました。


個人の衝動に“蓋”がされている限り、イノベーションは起きない。

2020年3月、満を持して2社の協業が始まりました。これから実践していく「クリエイティブ・カルティベーション・モデル」とは、どのような理論なのでしょうか。

安斎クリエイティブ・カルティベーション・モデル(CCM)、これは簡単に言うと「イノベーションが生まれる土壌が耕された、クリエイティブな組織の状態」について図式化したものです。
僕はこれまでに10年以上、個人とチームの創造性を活かすためのワークショップデザイン・ファシリテーション論について研究してきました。それを基盤に組織レベルのイノベーションの理論と経験値を統合して、開発したのがこのCCMです。この7つの要素、3つの層が互いに噛み合っている状態が、イノベーションが生まれるために必要なんです。

ミナベミミクリデザインはワークショップデザインとファシリテーションを、DONGURIはコンサルティングとクリエイティブを、それぞれ強みに持っています。お互いの強みを活かしながら、クライアントに対してはもちろん、自分たちの会社に対してもこのCCMを実現していきたいっていうのが、今回の協業の取り組みですね。

企業が抱える「イノベーションのジレンマ」は理論として1997年に提唱され、現在に至るまで長らく課題とされてきています。CCMのどのような点が、イノベーションの実現に繋がっていくのでしょうか?

安斎まず、このCCMで図式化された“3つの層”が互いに噛み合っている状態は「一人ひとりからアイディアが出ていて、個人としてもチームとしてもクリエイティブになっている状態」、なんですね。イノベーションはそういう土壌から生まれる、というのがCCMの考え方です。
「アイディアが出る」と言っても、独創的な良いアイディアである必要はなくて。子どもの頃から原初的に持っている、「何かを作り出したい、やってみたい」という内側から湧き上がる衝動が発揮されている状態が、CCMの個人の層のお話です。
例えば、この間Twitterでバズってた話ですけど、なぜか日本人って「トイレ行っていいですか」って言いますよね。暗黙のうちに許可者を頭の中に作って、湧き上がった衝動に蓋をするのが習慣化されてしまっている。個人の創造性の発揮には、衝動に蓋がされていない状態を作ることが必要なんです。
チームの層は、個が集まってそれぞれが多様な衝動を発揮しながらも、そこから新しいものが生み出されている。1+1+1が、3じゃなくて5とか10になってるような状態です。
組織の層では、会社としての哲学(ビジョンやミッション)に皆が納得した状態で業務に取り組んでいる状態が大切ですが、中長期的には、ビジョンやミッションそのものがより新しくアップデートされていく状態が理想です。しかも、経営層がトップダウンで変えるんじゃなくて、全員がボトムアップに理念を提案したり再解釈したりしながら、自分たちでやっていきたいことを書き換えて、組織も新しく変わり続けていくという状況ですね。
個人と、チームと、組織。この3つの層が噛み合う状態を作るときに大事なのが、僕らは対話だと思っています。対話的な関係性が組織の中に作られている状態が、新しいイノベーションが生まれる土壌になるというのがCCMの考え方なんです。

株式会社ミミクリデザイン 代表取締役 安斎勇樹

新しいイノベーションが生まれる過程で、対話的な関係性がどのような作用をもたらすのでしょうか。

安斎「新しい意味が生まれる状態」って、僕らはよく言うんですけど。いま注目されている「意味のイノベーション」でも、一人ひとりが提案したアイディアについてチームで何度も話し合うことで、プロダクトやサービスに込められる新しい意味が生まれるとされています。
組織づくりの観点からも、組織における日々の現実は、すべてチームにおいてコミュニケーションを通して意味付けられたものです。対話を通して、その組織で働く意味が納得されている状態が望ましいと思うんです。
と、考えたときに、チームが対話的関係にあり、組織や事業に対する良い意味づけを生み出せている状態だと、色んな整合性が取れていくんですよね。個人の衝動が対話を通してプロダクトに反映されたり、組織づくりにも反映されたり。一人ひとりが創造的でありながら、事業と組織も意味がアップデートされ続ける、というふうに。
この7つの要素がすべて通貫していると、組織全体の創造性が発揮され続ける状態が実現できるんです。それは同時に、皆が楽しいって思える状態でもあって。こういう状況をたくさん作っていきたいっていうのが、僕らの想いでもあります。

これまでの経験として、顧客企業が対話的な関係性を課題として認識している場面はあったのでしょうか?

安斎よくいただくのは商品開発の依頼なのですが、多くの場合、問題は「商品のアイディアが悪い」ことではなくて。問題の本質を辿ってみると、そもそもチームに対話的な関係性が築かれていなくて、個人の衝動に蓋がされていた、ということが原因であるケースはとても多いですね。どうしてもトップや事業担当者は、組織レベルの層で問題を認識するのですが、チームや個人のレベルの創造性に本当の課題が潜んでいる場合が多い。ちゃんとそこから取り組んでいきましょう、っていうのがCCMなんです。

対話的な関係性が、課題として認識されない原因は何だと思われますか?

安斎短期的な思考に捉われて、見えるところから着手してしまうからですかね。CCMの「カルティベーション」という言葉は「土壌を耕す」という意味で使っているので、その土壌のメタファーでお伝えすると、個人レベルの衝動やチームレベルの対話的関係性は、いわば土の中に埋まっている根っこなんです。どういう木が育って、実が成っているのかっていうのが、事業や商品のことで。
組織の中で問題と認識されるのって、売り上げの数字や成果物、つまり目に見えるものなんですね。それだと、「土に問題があるかもしれない」と薄々わかっていても「でも、まずはおいしい果物が欲しい」と、短期的な成果を求めようとしてしまう。
でも実だけを求めても、土が腐っていれば次の実は成りません。他の木から果物を収穫したり、お店で買ってきたりしても、ずっとそれを続けなきゃいけない、という悪循環になってしまうんです。

ミナベCCMって、その土の中の根っこに本質的なアプローチをする方法の話なんですよね。
企業運営は、P/L(損益計算書)を切って、そのP/Lドリブンで事業計画を立てて目標設計をチームに落とし、その達成度合いを評価していくという考え方が一般的です。だから目に見える短期課題に着目されがちなんですが、それだけ解決して目標が達成できたとしても、結局イノベーションって起きないんです。
短期課題を解決しながらも、もっと引いた目線で中長期的な課題に取り組んでいかないと、本質的な問題は解決できません。そのためにはこういうプロセス、対話が必要なんじゃないかっていうのが、CCMの考え方なんですよね。

株式会社DONGURI 代表取締役 ミナベトモミ

安斎僕らとしても、ずーっと課題を大事にしてきていて。依頼時の課題が本当に解くべき問題であることって、ほぼ無いと思っているんです。だから、必ず課題をリフレーミングするっていうところから始めるんですよね。
例えば「うちのチームはクリエイティビティがないから、研修でアイディアが出るようにしたい」とか「時代のトレンドが変わって商品が売れなくなってるからなんとかしたい」、みたいな依頼をいただいたとして。
でも、課題をリフレーミングしてみると、マネジメント側がクリエイティビティに蓋をして、衝動が発揮できない状態になっているからアイディアがないように見えるだけだったり。何をすれば売れるかという問題も、そもそも軸として作りたいものがチームや個人として備わってないから、外部トレンドに左右されてしまっているだけだったりするんですよね。
そんなふうに、遡って問題を再解釈したほうがうまくいくケースが大多数なんです。

再解釈、引いた目線で捉え直すと言うのはDONGURIとミミクリデザインで共通していますね。

安斎そうですね。アプローチが微妙に違うだけで、根底にあるスタンスは同じだと思います。
DONGURIは組織や事業のコンサル、クリエイティブっていう多岐にわたる専門家がいて、ミッションとしても「GAME CHANGE」を掲げていて。クライアントと一緒に組織づくりやものづくりを通してゲームを変えて、顧客を感動させようとしていますよね。
ミミクリデザインはワークショップとかファシリテーションが専門なので、一人ひとりがちゃんと対話できる場自体を作って、そこから良いアイディアや組織が生まれるっていう、ボトムアップで突き上げるような形なんです。
アプローチは違えど、お互いに最初の課題設定でモデルを作っていこうとしてきたし、これからさらに協力し合って取り組もうとしている、っていうところですね。

ミナベ「イノベーションのジレンマ」って本当によくある話で。目に見える定量的な短期課題の解決に夢中になっていると、少しずつ数値は改善されていくんだけど、いつの間にか競合企業に抜かれてしまうんです。その競合企業は、創造性が発揮される土壌があるから大企業を追い抜くことができるだけで。
定量と定性のバランスを取らないと、企業運営って成り立たないんですよね。組織としての事業計画、P/Lを組み立てなきゃ成り立たないっていうボトルネックがある中で、どうすれば個人の衝動をイノベーションの鍵として突破できるのかっていう話があって。
そこで、イノベーションのアカデミック研究における世界的なトレンドとしてあるのが、2019年にチャールズ・A・オライリー氏が発表した「両利きの経営」なんです。

組織にイノベーションを起こす鍵となる、「3層の両利き」とは。

「両利きの経営」とは、何なのでしょうか?

ミナベ「知の深化」と「知の探索」が両立されている経営のことです。「知の深化」は、P/Lとか事業計画上において売り上げを立て、事業推進をしていくような取り組みですね。効率を良くして無駄を省く。例えば人員数を最適化するとか、会議をオンラインにして移動時間を削る、とか。
もうひとつの「知の探索」は中長期的な事業の創出活動、つまり新規事業のための研究開発活動とか、そのための知的財産を増やす活動のことです。
新しいものって結局、人と人の知識が組み合わさって生まれるんですよ。「知の探索」は、数ヶ月や半年、1年で成果が出るものではないので、短期的なP/Lにおいては基本的に還元できないんです。
「知の深化」の観点で無駄を削って行くと、P/Lが短期的にすごく良くなる。なんだけれども、これがいわゆる「サクセストラップ」で、未来の資産形成的な観点を失ってしまうので、BS(貸借対照表)としては好ましくないんです。
でも企業活動って、基本的には株式市場で。1年単位でP/Lを出して、クォーター単位で考えて、それで決算を出して株主に評価されるっていう状況です。だからどうしても「知の深化」の方に行きがちなんです。
企業にとってベストな形で両利きを保てばイノベーションが起こりやすい状態になるっていうのが、「両利きの経営」の考え方ですね。この「両利き」が、個人とグループと組織っていう3層のレイヤーで両立されている状態が、CCMが目指す組織のあり方なんです。

安斎結構、特殊な考え方だと思うんですよ。よくあるのは、探索のユニットを新規事業部みたいな新規ユニットとして、子会社として切り離して、企業本体のリソースを使えない状態で挑戦させるパターン。ただ、このやり方じゃ失敗すると「両利きの経営」では警告されているんです。
そうじゃなくて、企業本体が探索の余力を作って、自分たちでアイデンティティを書き換えながら、Amazonがそうだったみたいに「自分たちはこういう会社なんだ」っていうパーパス自体をアップデートし続けながら、やっていく。っていうのが、提案されている方法なんですよね。深化だけを選択すると、組織のパーパスをずっと固定することになってしまいます。
組織レベルで深化と探索を両立するのもすごく難しいんですけど、僕らの提案というか解釈は、それをチームレベルでも個人レベルでも内在させたほうが良い、ということですね。個々人もチームも、何かに上手になっていきながら、新しいことにトライしていく。本当の意味で全員が両利きになっていく状態が作れると、すごく創造的で、サスティナブルな状態になるんじゃないかなと思っているんです。

“3層での両利き”はとても理想的に思えますが、実際には様々な問題が立ちはだかると思います。実現させていくために必要なことって、何なのでしょうか。

ミナベまさに、今回のDONGURIとミミクリデザインの協業がそのための取り組みなんですけど、ちょっと特殊なやり方なんですよね。
アプローチの方法自体は色々あるんですけど、肝になる要点は2つあって。1つ目が創造性の文化形成と、そのための構造設計。2つ目が、個人の中での深化と探索を紐付けること。

安斎1つ目について話すと、そもそも人がなぜ「業務に必要なことしかしない」深化の方に行きがちなのかっていうと、評価制度が紐づいているからなんですよね。目に見える分、深化のものさしはすごくわかりやすい。
Googleの20%ルールみたいな「これくらいの時間は短期的成果に直結しないことに使っていい」という許容が仕組みや風土として、チームにも個人にもあるのが大事なんです。
枠が決められると、人ってその枠の中で業務をこなすようになるので。その外側の可能性が3層で開かれていることが本質なのかなと思っています。それを仕組みとしてどう実装するかは組織デザインとか、ミナベさんが得意なところで。

ミナベ例えば「先進国においては研究開発費が増えていく一方で、日本の研究開発費は削減されている」みたいな話があるじゃないですか。あれって、「これくらいの研究開発の投資をしたら、10年20年の長期スパンでこういう相関関係があるだろう」みたいな相関性は予測されているんですよね。
闇雲に探索の投資をするのではなくて、その想定を構造設計に含めて、予測ができるようにしておく必要があるんです。

2つ目の「個人の中での深化と探索の紐付き」については、どのようなものなのでしょうか。

ミナベ個人の中で深化と探索の紐付けを実践するのって、すごく抽象的な解釈をしていかないと難しいんですよね。
日本の教育体系も深化寄りというか、探索をすることにあまり慣れていない人が多いような気がしていて。学習のリンク性、学び方をいかに教えるのかというのは、課題になりがちな気がします。

安斎あと、探索が好きかどうかの個人差があるなとも思います。僕ら、よく「エンジニアリング型」なのか「ブリコラージュ型」なのか、っていう言葉を使うんですけど。
「今日はビーフカレーを作る」って決めてからスーパーに行って牛肉と人参を買う、みたいな、目的のために収集していくのがエンジニアリング型。冷蔵庫の中に何があるんだろう、「じゃあこれでカレーを作ろう」って、目の前のもので作りたいものを作っていくのがブリコラージュ型。
ブリコラージュ型の人は、面白そうだからちょっと勉強しておこう、ってなったことが、後々になって自分の持つ知識と紐づいて、新しいことに気づけたりして。自分のアイデンティティの外側にあることを学びながら、自分を変えていくことが上手いんですね。対してエンジニアリング型は、自分に必要なことを学ぶのがすごく上手い。探索の学習って短期的な成果が出ないので、目的主義的な教育の観点から見ると曖昧なんですよ。

ミナベ枠を決めるとボトルネックになるので、外側に越境して学習して結合させていくことが大事なんですよね。そうでないと資産が形成できないまま減っていって、個人においてもイノベーションが起きづらくなっていくんです。
一見、今の自分には関係なさそうなことも探索しながら吸収して、実務においてもアップデートして深化させていく、という連携が理想で。そういう状況を作るための“場の設計”をしていくことが、すごく重要なんです。

「意図的にイノベーションを起こす」ための組織構造を設計する。

その“場の設計”を、ミミクリデザインとDONGURIの協業ではどのように実現していくのでしょうか。

ミナベそもそも特殊なのが、2社を横断する1つのプラットフォームの中に、10個のコミュニティ(チーム)があること。その中に一人か二人、ファシリテーションリーダーシップを持ってメンバーと対話する人がいます。
チームごとに対話を重ねて、それぞれ違うパーパスを持って。「こういう容態が自分たちにとって幸福な状態である、それがサスティナブルに続くようにしていきたい」というものがあるんですね。10個のチームがそれぞれ別個体で存在しているような感じです。
その10個のパーパスを踏まえて、OKRとかMBO、組織の仕組みを組み立てながら接合していく、というのが協業の構造になります。つまり、意図的に組織内でイノベーションを起こそうとしている取り組みなんですよ。
深化の前提って、トップの姿を正として、それをピラミッド型で細分化していく形で。でも、この協業で取り入れているコミュニティ型って、僕とか安斎さんを正とした姿ではないんです。だから、同じプラットフォーム内にすごく多様性がある状態なんですよ。これはパーパスとしても、それぞれの職能っていう意味でも。

多様性が保たれ続ける設計にすることで、創造的なイノベーションを意図的に起こそうとしている、ということですね。かなり革新的な取り組みだと思います。

ミナベ創造性を多発させるための構造設計、っていうのがここ10年くらい僕のテーマだったんです。
DONGURI創業時もなんですけど、構造設計のときにモデリングで意識していたのは、IDEOなんですよね。IDEOってデザインシンキングとか組織文化にフォーカスされがちなんですけど、それはHowのひとつでしかなくて、実は裏側の組織構造が美しいのでは? ってずっと思っていて。
組織内にまったく違うスペシャリストが様々に同居して、500人規模でコラボレーションや越境を実現していくのって、デザインシンキングだけじゃ絶対無理なんですよ。
外側の面では、顧客のコンサルテーションで得た要素を自社内で新結合して、A社で行ったことをB社でも導入する、というのを実践していて。内側でも、色んなスペシャリティの多様性を享受して、新結合が生まれるような構造になっているんです。これは意図的なコラボレーションの促進で、事業開発や組織開発も加味した仕組みなんだろう、という仮説もあるんですよね。
今回の協業でも、その考え方を逆算的に取り入れています。多様性の素晴らしさだけじゃなくて、対話によるファシリテーションで、個々人を新結合させていくんですね。それで結果的に想像しなかったような事業とか、組織内のコラボレート、イノベーションが起きていくっていう状態を実現したいんです。

ミミクリデザインとDONGURIだからこそ実現できる形、という気がします。

安斎それ、すごいありそうですよね。

ミナベDONGURIは「PLAYGROUND」、ミミクリデザインは「創造性の土壌」というビジョンがあって。そこの思想背景が共通していたっていう前提はあると思います。パーパスと得意なHowが噛み合っているんですよ。

安斎組織として掲げているミッションビジョンが、2社とも何か社会的なゴールがあって、その課題を解決するために逆算するってものじゃないんですよね。ビーフカレーを作るぞ! っていうよりかは、冷蔵庫に何があるかな? の考え方。

ミナベビーフカレー、好きすぎじゃない? この後、食べに行く?(笑)

確かに、DONGURIはPLAYGROUND、“遊び”を前面に掲げていますし、ミミクリデザインの社名も「見立て」という“遊び”が語源になっていますね。

安斎根底が共通しているんですよね。“遊び”ってすごい探索的で、これ面白そう! っていう好奇心が結果的に、何かに繋がっていくので。
僕らもずっと衝動っていう言葉を使い続けてきて、それに共感してくれたメンバーが揃っているんです。内発的な2社が“遊び”っていうキーワードを共有しながら組織を作っていくっていう感じでしたね。

協業にあたっては、ミミクリデザインとDONGURIの2社で経営合宿を行われたそうですね。

ミナベ2月初旬に「ミミグリ経営キャンプ」っていう名前で、マネージャーを対象に2日間に分けてやりました。DAY1ではWhyのところ、協業していくにあたって共に目指して行く着地点を、DAY2ではHow、ドラフト会議的にこのチームとこのチームが一緒に取り組んだらこういうことができるんじゃないか、って対話していくワークショップでした。
協業について僕と安斎さんはかなり深い対話をしていたんですけど、実際にスタートするにあたっては、全員での対話が必要なので。10個のチームがそれぞれにパーパスを掲げてアップデートしていく中で、「2社で横断する」という新しい挑戦が、プレイフルに自然に結合されていくことが理想だと考えたんですね。

2社のマネージャーが集まった合宿の場では、どんな対話が交わされたんでしょうか。

ミナベすごいスムーズだったんですよ。DAY1の時点で「思想も共感性も含めて自然すぎて、一緒にやることに何も違和感がない」「どうコラボレーションしていくのかを早く話したい」っていう感じで。示し合わせたのかな、っていうくらいに自然に進んで行ったんです。

安斎マネージャーだけの参加だったので、DAY2ではまだ顔が見えてないメンバーのことをお互いに話して。相互理解を深めた上で具体的なオファーを出し合って、可能性を出し合っていきましたね。ラブコールを送り合うような。

ミナベ見てて、すごく面白かったんです。ミミクリデザインの皆さんがファシリテーションの専門性を持っていたので、予想はしてたんですけど、自然にするすると対話が行われて、新しい芽がどんどん出てきて。深い対話をして、さらにレイヤーの高いイノベーションの芽が生まれるっていうのは、見たことない光景で。感銘を受けましたね。

ミナベ「合宿での対話がスムーズすぎて、僕たちはもう何もすることなくて。楽しそうだから混ぜてほしいな、とか思ったくらいです(笑)」

それほど盛り上がるなら、やっぱり「なるべくして」という感じもありますね。そこから、どのように実際の協業体制を築いていったのでしょうか。

ミナベスプレッドシート上で共有しながら、P/Lとか経営の計画を作っていったんですけど。安斎さんは、側から見てどう思いましたか?

安斎……すごいなあって。

ミナベありがとうございます(笑)。

安斎って、そういう話じゃなくてね(笑)。

ミナベうん、僕の承認欲求はどうでもよくて(笑)。

安斎いや、何がすごいって、ミナベさんは組織デザインの専門家なので、スプレッドシートで組織の構造とか責任範囲を全部明確に設計しているんですよ。どんなときに誰と話して意思決定すればいいのか、OKRの構造が組織内でどう紐づいているのか、とか。
今回の協業って、2社それぞれの経営計画と組織構造がありつつも、横断すべきところと、一緒に実現していく役割分担のところがあって。だから組織デザインをちゃんとしないと、すごい複雑になるんだろうなって思うんです。
これはどっちがやるんだっけ、とか。そういう責任範囲もそうだし、事業計画としても、数字として一人ひとりの評価とか給与と直結して齟齬がない状態にしていくのって、相当難しいことだと思うんですよね。

ミナベ重要なのは、個人とチームと組織という3つの層、すべてを想定した設計をすることなんです。マクロとミクロの視点を何重にも往復して、色々な変数を定点で組み合わせてP/Lに反映して、エラーが起きないかっていうのを検討して計画を組み立てるんですね。
この人の時間をこれくらい短縮したらこれくらい探索の時間ができるね、みたいな。それを細かく計算する積み重ねで。その人が会議で集まったり組織の対応をしたりしたら、その分、時間かかるじゃないですか。それも含めて計算する感じです。

さらっと説明いただいていますけど、それって、めちゃくちゃ複雑で細かい、大変な計算……ですよね?

ミナベ大変ですね(笑)。でも、初期の事業計画の精度が高ければ高いほど、レバレッジが効くんです。初期の事業計画でリスクヘッジも含めて設計しておけば、後々の改善もしやすいんですよ。

安斎途中で共有してもらって、相談しながら見てたんですけど。正直、自分ではできる気がしないですね。

ミナベミミクリデザインのマネージャーとも対話して、そのWILLも全部内包しています。P/Lとか事業計画はマクロな印象を持たれるので、そこまでミクロな要素を内包することに驚かれましたね。「本当に?」って疑われたり (笑)。

安斎まず、売り上げ目標が1円単位なのにビビりましたもん(笑)。何百何十何円、まで設定されてるんです。

ミナベあ、そこ?(笑)

安斎キリがいいから四捨五入、とかしないんだなって(笑)。探索に割く時間が変わると、設定する目標が数%単位で変わったり。メンバーのWILLが反映されたミクロな目標で、それが組織構造とも結びついて整合してるんですよね。ちょっと変更すると、数値に円単位で影響が出るんです。

ミナベそうしないと、計画上のメンバーのラベリングが「全て同じような人」ってなるんですよね。

安斎だから、マネージャー陣もすごく納得感あって。WILLと組織目標が完全にイコールで整合しているんです。これを追いかけていくことが、自分たちの行きたい方向、チームの状態を作ることと一致しているんだなっていう。

協業に向けて動き始めてから、組織内にどのような変化がありましたか?

ミナベ合宿の後、DONGURIの皆がめちゃくちゃ揺さぶられて。社内で対話ブームが起きてますね(笑)。

対話ブームですか!

ミナベ DONGURIってミミクリデザインに比べると平均年齢が少し上なんですよ。スキルが身についている分、プロジェクトの着地もすぐにイメージできちゃう、みたいなところもあって。
でも、「はたしてそれでいいのか?」っていう問いが始まっていて。全コミュニティに、アイデンティティの揺さぶりが起きたんですよ。僕も不安になるくらいの革命的なブーム(笑)。それで、DONGURIのコミュニティ名も変えることになったんです。

でも、DONGURIは以前から対話を大事にしてきた印象があります。合宿での体験は、何が違ったんでしょうか。

ミナベ対話の質の高さじゃないですかね。皆、社内でも仕事でもワークショップを推進してましたけど、ミミクリデザインの対話は国内における最高水準のクオリティなので。納得をさらに超えるプロフェッショナルさに、何か気がつくものがあったんでしょうね。個人の衝動が発揮されると、ここまでのことになるのかって。僕が戸惑うレベル(笑)。

安斎逆のことがミミクリデザインで起きてて(笑)。DONGURIと全体会したときに、全員が自分のジョブディスクリプションの評価とそれに対応した粗利とかを当たり前のように、ゲーム感覚で達成しているのに衝撃を受けて。今、ミミクリデザインのマネージャーたちは皆、やたらとジョブディスクリプションと粗利の話をしてますよ(笑)。

安斎「お互いの存在が刺激になって、良い意味で変化していくのが面白いですよね」

3月からの協業スタートなのに、既に2月から革命的な変化が起きてますね。

ミナベこういう変容とかダイナミクスは今後たくさん起きると思うので、僕自身もどんどん楽しんでいきたいんですよね。

安斎もともと、組織デザインと組織開発は別物として考えられていて、理論として統合してなかったんです。お互いにそれを分かち持っていた状態だったのが、この協業を機会に、噛み合う組織づくりをすることになって。
CCMの理論で、コンサルティングとして顧客に影響を与えて行くだけじゃなくて、DONGURIとミミクリデザインの内側の組織づくりも開示して、ナレッジをシェアして行きたいんです。こういうクリエイティブな組織の作り方があるんだな、って。そういう影響が与えられるような横断型組織になれるといいなと思います。

ミナベCCMの提案も、それを社内外で実践していくことも、僕としては前例を知らない状態です。お互いの組織の知が結集した横断型の経営で、実践と研究を新結合させながらアップデートして、イノベーションにおいても新たな提案をしていきたいですね。


対談を通して語られたのは、 人の内側にある、創造の可能性を信じる想い。

早くも芽生え始めたイノベーションの兆しに、 2社の協業は必然だったのだと思えてならないほどでした。

これから起きるであろう、組織イノベーションの大革命。 開拓されゆく新たな未来が、今から待ち遠しくて仕方ありません。

WRITTER
田口友紀子
PHOTOGRAPHER
永井大輔(DONGURI)
  • ミナベトモミ

    大手家電メーカーでPMを手掛けたのち独立。現在はメガベンチャー/ミドルベンチャー中心に事業立上/組織推進のコンサルワークを手掛ける。得意分野はP/L.B/Sの経営指標開発と、それを基軸としたモダンアジャイル開発環境変革と、戦略人事機能の構築。及びアウター/インナー両面考慮したブランドマネジメント部門の立ち上げ。現在デザイン経営を推進するBizreachにて、デザイン本部 CDO補佐も兼任。

  • 安斎勇樹

    東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。株式会社ミミクリデザインCEO、東京大学大学院 情報学環 特任助教を兼任。主な著書に『問いのデザイン-創造的対話のファシリテーション』(学芸出版社)『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』(慶応義塾大学出版会)『協創の場のデザイン-ワークショップで企業と地域が変わる』(藝術学舎)がある。

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